連載記事<11回目>
古越龍山紹興酒のラインナップと新しい動向
今回は古越龍山が総代理店永昌源を通じて日本で販売している商品と会社の最新動向をご紹介します。
紹興酒は甘口から辛口まで、元紅酒(げんこうしゅ)・加飯酒(かはんしゅ)・善醸酒(ぜんじょうしゅ)・香雪酒(こうせつしゅ)と4種類に分けられますが、現在日本で販売されている20数種類の商品はほとんど中辛口の加飯酒です。花彫酒(はなほりしゅ)とも言われます。
加飯酒は主に熟成年数でラインナップを組んでいます。それに加え、ブレンド技術を駆使していますので、同じ熟成年数の商品でも原酒の組み合わせ方はいろいろなパターンがあります。その年数の原酒が中国の国家基準では5割以上、古越龍山の社内基準では6割以上あって、しかもブレンドに使うすべての原酒の加重平均値が表示年数に達すればいいと決められています。
昨年12月には、日本で初となるカラメルフリーの紹興酒「純龍(じゅんりゅう)」が発売されました。カラメル色素は紹興酒にも着色料として使われていますが、この無添加の「純龍」は8年熟成を中心とした原酒のしっかりとした味わいと軽快な口当たりが特長です。常温または少し冷やして、ワイングラスで楽しむことがおすすめです。紹興酒の麹臭が抑えられて、すっきりした後味なので、マーボー豆腐や回鍋肉などの中華料理はもちろんのこと、豚の角煮やぶり大根などの和食とも相性がよいです。
さて、ラインナップ全体を見てみますと、中華料理店で一番よく見かける「金龍」は5年貯蔵原酒を中心にセレクトした優美な味わいをカジュアルに楽しめるスタンダード商品です。もち米の持つ自然な“甘さ”を引き出し、酸味を抑えた芳醇でやわらかな口当たりを実現し、中国料理のおいしさを引き立てる逸品で、180mlのミニボトルと一升瓶(1.8L)のラインナップもそろえています。「銀龍」は3年貯蔵原酒が中心のシャープな喉越しの紹興酒です。両方ともアルコール分が17%になります。
2014年に発売された軽やかで爽やかな新感覚テイストの紹興酒「エクストラスムーズ」はもち米由来のほんのりとした甘さは残しつつ、すっきりとした飲み口に仕上げた従来の紹興酒とは異なった新しいタイプの紹興酒です。料理の味を引き立てるライトテイストで、古越龍山所有の豊富な原酒の中から厳選した味わいは、スッキリと飲みやすく、独特の香りを抑えたクセのない軽い飲み心地が特長です。アルコール度数も14%と控えめです。
レギュラー商品として陳年5年、8年、10年を揃えています。またカメ容器の紹興酒は5L、9L、23Lから選べます。プレミアム商品として、中国の代表的な陶磁器名産品である景徳鎮ボトル入りの10年、15年、25年ものもあり、甘みと酸味のバランスと口当たりの良い逸品です。さらに高級な30年、50年ものもあります。長期熟成原酒由来のしっかりとした味わいとまろやかな口当たりの良さが特長です。
そのほか、8年熟成した原酒の上澄み原酒のみ使用する商品「澄龍(チェンロン)」が2020年に発売され、そして長期熟成させた10年物原酒に善醸原酒をブレンドした「古越龍山香甜(しゃんてん)2020」という限定品も販売されました。10年物原酒の豊潤な香り、雑味のない味わいとほのかな甘みの紹興酒です。
一方、善醸酒は仕込み水に一部老酒を使用するという独特の製法でできたもので、製法由来の深い味わいと華やかな香り、濃厚で上質な甘さが特長の紹興酒です。従来の紹興酒と同様に、お燗やストレートではもちろん、ロックや、ソーダで割った飲み方“ドラゴンハイボール(永昌源の登録商標)”でも、より一層美味しくお飲みいただけます。 また、中華だけでなくさまざまな料理と一緒に楽しむことができます。
中国国内においては、厳格な基準が設けられている紹興酒の範囲から外れますが、低アルコールの商品やクコの実、蜂蜜などを入れた薬酒を特殊黄酒として販売されています。ちなみに、梅酒にクコの実、山査子(さんざし)の実を加えて作った、爽やかで豊かな味わいが特長の「貴梅酒」は日本で販売されています。また、「桂花陳酒」という商品があり、こちらは金木犀の花弁とぶどうが織り成す、華やかな香りでエレガントな味わいが特長のお酒です。
古越龍山は2018年に醸造や食品化学で有名な江南大学(無錫)と連携して、醸造イノベーションラボを立ち上げました。その研究成果として、悪酔いを起こす原因物質(アセトアルデヒドや生体アミンなど)を突き止め、その成分を半減した新商品を開発しました。また2019年から「世界美酒産地づくり」戦略の一環約1000億円を掛けて、「黄酒産業園」の建設を進めています。これからも紹興酒のさらなる技術革新が期待されます。