連載記事<9回目>
紹興酒の分類とティスティング
紹興酒はどれも味が同じだと思われがちですが、実際は糖分の含有量や製造方法、熟成期間などによってさまざまな種類があります。
▽甘辛による分類
紹興酒はワイン、日本酒と同じように糖分の含有量によって辛口から甘口まで大きく4種類に分けられています。それぞれ「乾型」(辛口、糖分15.0g/L以下)、「半乾型」(中辛口、糖分15.1-40.0 g/L)、「半甜型」(中甘口、糖分40.1-100.0 g/L)、「甜型」(甘口、糖分100.1 g/L以上)と言います。その代表的な紹興酒は「元紅酒」(げんこうしゅ)、「加飯酒」(かはんしゅ)、「善醸酒」(ぜんじょうしゅ)、「香雪酒」(こうせつしゅ)になります。
「元紅酒」は、もっともオーソドックスな製法で造られる紹興酒で、朱紅色に塗った甕に詰められていたことから、その名で呼ばれるようになりました。独特の芳香が顕著で、味はほろ苦いのが特徴です。
「加飯酒」は、基本的な製法は元紅酒と同じですが、仕込み時にもち米と麦麹を元紅酒の約10%増やして造ります。熟成期間も元紅酒よりも長く3年以上。食中酒として最適で、中国でも日本でも普段飲まれている紹興酒のほとんどはこの加飯酒です。
「善醸酒」は、仕込み水の代わりに、1年ものから3年ものの元紅酒を使って醸造した紹興酒です。直糖分とエキス分が多く、濃厚な味わいと豊かな香りが特徴です。1970年代に生まれた日本の「貴醸酒」と製法が似ています。
「香雪酒」は、甘いリキュールのような紹興酒。元紅酒の醪(もろみ)に麦麹を追加したうえに、粕取焼酒の「糟焼(ツァオシャオ)」を添加して造られます。酒粕が雪のように真っ白ですから、こういう名前が付きました。日本の本みりんの製造に似ています。糖度、アルコール度数が高く、夏場でも醸造できるのも特徴です。
もう一つよく見かける「花彫酒」(ハナホリシュ)の呼称は、女児の誕生にあわせて紹興酒を造り、成長して嫁入りする際に、彫刻した甕を嫁入り道具として持たせる旧習からきたもので、子どもが育つほど長く寝かせた酒という意味。長期間寝かせた上質の紹興酒の総称として使われていますが、現在では、「加飯酒」と同じと認識しても差支えがないです。
また製造方法によって、「淋飯酒」(りんふぁんちゅう)、「攤飯酒」(たんふぁんちゅう)、「喂飯酒」(うぇふぁんちゅう)と分けられます。淋飯酒は蒸し米に水をかけて冷ます製法からこの名がつけられました。紹興酒においては速醸酒と位置付けられ、攤飯酒の酒母として使われます。攤飯酒は蒸し米を竹むしろなどで広げて冷やす製法からこの名がつけられ、紹興酒の代表的な伝統製法です。喂飯酒は日本酒の三段仕込みと同じように原料を数回に分けて投入する製法です。
伝統製法で造られた紹興酒は「手工酒」とも言われます。それに対し、純粋培養の麹・酵母を使って巨大タンクで発酵させる近代製法で造られた酒は「機製酒」と言われます。(この文を削除)また伝統的な紹興酒に対して、特殊な麹を使って醸造したすっきりタイプの酒もしくは低アルコールの酒は「清爽型黄酒」と言われています。(これに差し替え)また5年もの、10年ものと言われるように、熟成年数による分類方法もあります。
▽紹興酒のテイスティング方法
紹興酒のテイスティングは色、香り、味わいなどを確認するもので、ワインや日本酒と似ているところが多いです。
①「観色」が色などの外観を見ることで、適度な光で、正面から見たり、横から見たりします。白い紙の上において、真上から清澄度もチェックします。 紹興酒がなぜ琥珀色になるのかというと、アミノ酸の量が特に多く、このアミノ酸と糖が貯蔵中に化学反応を起こしメラノイジンという褐色物質を生成することによります。また、熟成時、甕から溶出した鉄分によって色は更に濃くなっていきます。
②「聞香」は香りを嗅ぐことで、グラスを鼻の下において、香りを嗅ぎます。時間が長くなると慣れてしまうので、2~3秒で次の酒に移ります。
③「賞味」は味わいの確認で、紹興酒の味は「甜」(ティエン、甘味)、「酸」(スワン、酸味)、「苦」(クー、苦味)、「辛」(シン、辛味)、「鮮」(シエン、旨味)、「渋」(スー、渋味)という六味で評価されます。
④「品格」は格調の判定で、ボディ全体の調和性が取れているかどうか、紹興酒の典型的な風格を有しているかどうかを判断します。
それぞれ10点、25点、50点、15点で採点されます。