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日中友好協会の会報誌における10回目の連載が刊行されました。

連載記事<10回目>

紹興酒の保存と熟成

 ▽甕熟成 

紹興酒は醸造が終わってから圧搾・火入れして23Lの甕に入れられます。その後、環境が適した倉庫で保管され、熟成期間に入ります。時間が経てば経つほど、香りの良い美酒になるので、「老酒(ラオチュウ)」と呼ばれる故です。中国語で「長期熟成」のことを陳醸というので、熟成期間の長い酒を陳年老酒と、また5年物を「5年陳」といいます。ただ元酒が良くなければ長持ちしません。また糖分が少なめの加飯酒は長期熟成に向いています。

甕の蓋は通気性のいいハスの葉っぱ、竹の葉っぱと粘土を使っています。日本向けの輸出は検疫の関係で粘土が使えないので、代わりに石膏で固められています。

甕入り紹興酒の貯蔵環境は温度4度以上20度以下の涼しいところが一番望ましいとされ、直射日光の当たらない、湿気の少ない、風通しのいいところが条件です。周りのものの臭いが移るような場所は避けて、平らなところに保管し、普通は4段積みします。同じ倉庫でも位置によって熟成度合いが違うので、毎年夏頃場所を入れ替えています。

古越龍山の中央酒庫は中国最大の黄酒貯蔵庫で、総敷地面積20万平方メートル、その貯蔵量は26万キロリットル、約1100万本以上の原酒を寝かせています。50年以上の古酒も多く保管されています。風通しを良くするため天井が高く、四季を通じて温度も湿度も一定に保たれており、良質な紹興酒の熟成に適した環境になっています。

▽賞味期限

開封前の賞味期限について、中国でも日本と同じように食品の国際規格CODEXを採用し、アルコール含有量10%以上の飲料は賞味期限の表示をしなくていいと決めています。日本酒はこれによって賞味期限を記載していないです。紹興酒の場合は日本酒ほど風味の変化が少ないですが、ガラス瓶を使っている商品は普通5年と記載されています。ただこれは紹興酒の風味が保証される期間であり、5年が経っても飲めなくなるわけではないです。誤解を避けるために、古越龍山は2017年から辛口(元紅酒)と中辛口(加飯酒)の賞味期限の表示をやめました。日本で流通している古越龍山の紹興酒はほとんど加飯酒ですので、ラベルに賞味期限の記載がないです。

紹興酒の瓶熟はボトルネックの酸素含量、溶存酸素含量などで少し進みますが、かなり限定されます。ただ甕入りの紹興酒は保存環境が良ければ自宅でも熟成が進みます。

賞味期限は、アルコール度数、容器の材質にもよります。また保存状態が非常に大事です。アルコール度数が10度以下の商品は紹興酒ではなく、黄酒の範疇になるのですが、賞味期限を表示しなければならないと決められています。古越龍山は普通3年と記載しています。

10度以上の場合であっても、甘口の紹興酒は糖分が多く含まれているため、時間が経つと色が濃くなり、苦みが増すので、1~2年以内に飲用することがおすすめです。

▽開栓後の保存

紹興酒は日本酒ほどデリケートではないので、常温でも構わないですが、同じ醸造酒としてやはり光、温度、空気接触に注意が必要です。

光(紫外線)の入らない場所に保管するのがベストです。空気(酸素)と接触することで、酸化し始めるので、しっかり蓋をしましょう。また、香気成分が揮発しやすくなるので、特に熟成年数の長い紹興酒はせっかく増えたエステル香などが飛んでしまいます。こういったリスクを考慮すると、なるべく冷蔵庫に保管し、早めに飲むに越したことがないです。

日本で有名な「甕出し」ですが、地元では熟成甕から出した生酒の「甕出し」を量り売りしているところもあります。ただ甕を開封すると、冬場でもなるべくお早めに飲むのが必要です。小瓶に移し替えたり、日本酒とワインと同じように脱気栓を使ったりするとなおよいです。

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